有限会社金波楼 / KINPARO Co., Ltd.

里海邸の日記

About living simply
with sea nature

vol’02

明け方

いつも寝不足な生活をしているのに、旅宿ではいつまでも寝ていたいとは思ったことが無く、朝早く目覚めてしまうことはご褒美だと思ってしまう。短い睡眠だから、シンプルに深く眠れる宿はそれだけでも魅力的だ。

 

明け方は心をリセットする時間。自然豊かな旅宿。夜明けの風呂場まで虫の音を聴きながら歩く穏やかな心境は平和で貴い。暁の差し込む脱衣室で浴衣を脱ぎ、湯煙の中で身体を洗い清めて、湯船に身体を浸らせると、湯の温かさが意識の奥まで浸透する。

 

心も身体も湯でほぐれると、海に散歩に行きたくなる。草履で草を歩き朝露で足を濡らすと、草や土とつながったような気がした。波打ち際で波に洗われた朝の光を浴びた小石を拾うと海からメッセージを受け取った気がした。

 

渡り鳥の群れが遠い空を横切る。波打ち際の近くで水鳥たちが潜りを繰り返す。そして波に洗われ続ける数千万年前の巨岩たちは沈黙している。海岸植物の草むらでは虫の声が絶え間ない。

 

いつの時代から鳴いていたのか。

心もこの身体も悠久の時空に広がり、自然とひとつになる。