有限会社金波楼 / KINPARO Co., Ltd.有限会社金波楼 / KINPARO Co., Ltd.

ご挨拶・事業紹介

Greetings/
business introduction

ご挨拶/Greetings

新しい宿を空想していた15年前の秋の日、米国の女性飛行家アン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈り物』(Gift from the Sea)という本に出会いました。世界を巡る飛行機乗りの著者が都会から離れて離島に滞在し、自身の暮らしを振り返りながら女性の幸福論を詩的に綴った随想です。

彼女は、社会と個人の釣り合う生き方のために「自分の内側に心を向ける時間を持つこと」を提唱します。70年前の米国女性が抱えていた「外(社会)への対応に忙しすぎる生活」の苦悩に向けた救済の言葉の数々は、現代の情報社会にしんどさを感じる私に響きました。

この本をモチーフに、静かな海辺の別荘のような場所をつくりたい。そう思い、東京から北へ100キロ離れたこの美しい夜明けの海に小さな宿をつくりました。クラシックな海浜保養文化を守り育んできたこの自然海岸を舞台に。私や貴方の純粋な「今と、ここ」を潮風に記憶させる人間回復の場をつくるために。

大洗海岸にて
令和5年1月 石井盛志(金波楼六代当主)

略歴 1972年青森県野辺地町生まれ。東京都立科学技術大学(現・東京都立大学)大学院修了。1997年より大洗町に移住。現在、大洗旅館組合長および一般社団法人大洗観光協会副会長。

理念/Philosophy

不確実な世界に
「自然体の居場所」を提供する。

2020年。私たちの対話はオンラインが日常になり、加速され、多重化し、世界中の人々の感情タグを付けたシグナルは大海に降り注ぐ暴風雨のようにやかましく混沌としています。私たちはこのフェイクワールドを彷徨いながら、手応えのあるコミュニケーションの場を渇望しています。

日本は多世代や多文化の共生に向かい始めました。それは異なるライフスタイルを尊重し、緊張や軋轢も乗り越えて幸福な社会を目指すこと。その道中で消耗したアイデンティティを回復する落ち着いた休憩場所も欲しいところです。そして気候変動の不安が大きくなる中でも、自然の畏怖に身体を委ねて、本来の人間が持ち合わせている生命力を再ブーストさせたい人が増えています。

自然や社会や文化が不確実な世界において、私たちが純粋に生きる喜びを身体で実感できる「自然体の居場所」は大切な存在です。素朴で、静かで、スローな、恩寵に溢れたオアシスの安らぎ。私たちはそのような居場所を創造します。

事業/Our business

ジオサイトの上、海と森の間に、
別荘宿をつくる。

大洗海岸にわずか8室の小さな宿をつくりました。日本の家らしい玄関で履物を脱いで素足で過ごす宿です。文明開化期の潮湯治宿のように浴衣で過ごす穏やかな湯宿時間。素朴なホスピタリティ。プライバシーが守られ、海に開かれた別荘風の間取りにほっと落ち着きます。ゲストの滞在を見守る私達田舎のスタッフとほどよく交歓できる小さな宿であることも「自然体の居場所」を確かにします。

宿はジオサイトの上、波打ち際と森の間に。太古の名残り、星や雲の流れ、潮の満ち引き、雨と石、砂を歩く貝、潮だまりの小魚たち、波の音、風の音、森と海を遊ぶ鳥たちなど…目と耳を澄ませば、素朴が溢れています。

時計の針の日常とは異なる気紛れで豊かな素朴のポリフォニー。

滞在のひとときは幼少のアフォーダンスに溢れています。自然の導きで、本来の人間力を取り戻すのが別荘宿です。

沿革/History

1.創業者 石井藤助について

石井藤助は渋沢栄一と同じ1840(天保11)年に生まれました。磯浜(現在の大洗町)で、20歳に桜田門外の変、24歳に天狗党の乱、28歳に戊辰戦争~明治維新と、幕末の時代に青年期を過ごします。東茨城郡史(大正15年刊行・東茨城郡教育会編纂)より藤助が里海邸の前身である旅館金波楼を創業するまでの歩みをご紹介します。

『・・・明治3年漁業に従事し、同8年那珂川汽船を計画せしが、15年にカムチヤカ(ロシア)に行き漁業其の他の視察をなし、25年鯛味噌を発明する所あり、これより先き(21年)金波楼を作りて、料理兼旅館を開業し、33年大洗ホテルを営む。氏は少壮の頃鰹節を両毛の地(栃木・群馬)に行き、利する所多かりき、乃ち漁船4艘を購ひ、鋭意漁獲の改良を図り、拮据20年間、船数46艘を有するに至る。後汽船茨城丸を購入せしも遠州洋にて風波の為に破壊され、廃船を売って塩に換へしが、翌年塩需要倍騰して、利する所亦多し。遂に海水浴業を企図して金波楼を営むに至りしなり』

2.文明開化-近代海水浴の
発祥と金波楼創業

大洗海岸は江戸時代より病気治療・療養のための潮湯治場でした。明治時代になると文明開化の潮流の中で、公衆衛生のための西洋医学に基づく海水浴場が全国の沿岸で開設されます。当時の東京は水道整備が遅れ、コレラや結核が流行する感染症の時代でした。

明治20年代初頭に大洗にも西洋医学式の海水浴場が整備され、御料地(皇室の所有地)にも指定されました。水戸―那珂湊間を結ぶ蒸気船(水上交通)を営む藤助は、この大洗の保養地化に商機を感じて、明治21年に大洗海水浴場に海水浴旅館金波楼(現在の里海邸)を創業します。『大洗海水浴場誌』(明治28年)によると、大洗は熱海や大磯と同じく世に知られ、大学や諸名医の肺結核や他慢性患者の転地療場として「大磯にあらざれば大洗である」と評価されています。宿の風呂は海水を汲んで温めています。当時の1泊宿泊料は特別最上等で1円50銭。現在の換算で3万円位。1週間の滞在費用が3円50銭。現在の7万円位で、この時代の海水浴は湯治場のように20日から30日続く長期滞在のスタイルでした。

3.終戦後から平成バブル崩壊まで

終戦から高度経済成長期にかけて国内観光は大回復し、レジャーブームを迎えます。大洗の海水浴場にも人が押し寄せ、観光施設がつくられてゆきます。大衆レジャーに対応するべく、金波楼は1975(昭和50)年に全面改築工事をして、鉄筋コンクリート造の昭和レトロなリゾートホテルとしてリニューアルします。1泊宿泊料は2万円程で、全18室の客室にユニットバスが備わり、多くの客室にベッドが採用されました。大浴場には海水ではなく大洗磯前神社の湧水(御神水)が利用されるようになりました。団体バス旅行に対応し、最大100畳に広げられる宴会場では結婚披露宴も行われたようです。ロビーにはインベーダーゲームも。1985年のつくば万博の開催時期はとても忙しく大変だったそうですが、いい時代だったのかもしれません。

平成になるとバブルが崩壊し、経済は反転。団体旅行が次第に減り、宿泊施設を比較することができるカタログ的な旅行雑誌が創刊されるなど、個人旅行客を宿が奪い合う時代にシフトします。宿泊単価は1万円台まで下がり、利益を出すのが難しい運営が続きました。

4.「里海邸 金波楼本邸」で
原点回帰

平成23年に屋号を「金波楼」から「里海邸」に改称し、再びリニューアルに挑戦。アン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈り物」との出会いをきっかけに休養の専門店のような宿を構想し、そのベースデザインとして近代海水浴時代の創業旅館「金波楼」の保養センスを再現し、大洗の原初的保養を併せ持つ宿にまとめました。

新たな屋号「里海邸」(さとうみてい)の「里」は豊穣な常陸国を、「海」は大洗の海を意味します。「邸」は大きな家を意味し、新たな宿が田舎の家のようにゆったりとした居心地の良い空間でありたいとの願いを込めています。

新しい宿の開業は東日本大震災と重なりお客様の無い厳しいスタートでしたが、大洗海岸の風土に寄り添った保養価値を現代人のために再現出来たことは大きな喜びです。里海邸の誕生後はゲストやスタッフがこの幼い宿を育ててくれました。ある人にとってこの宿に特別な価値があるとすれば、「大洗海岸で里海邸はどうあるべきか」との問いに対して、多くの人々の思いが寄せられて求道的に変化してきたからと思っているところです。

会社概要/Company profile

会社名
有限会社金波楼 /
KINPARO Co., Ltd.
所在地
〒311-1301
茨城県東茨城郡大洗町磯浜町 6883
創業
1888(明治21)年
会社設立
昭和39年5月29日
資本金
2000万円
運営事業
宿泊業
(里海邸 金波楼本邸の運営)
社員
30名(アルバイト、
派遣社員含む。令和4年8月時点)
役員
代表取締役 石井 盛志
取締役 石井 文佳

クリエイティブパートナー

常陽銀行/樫村税務会計事務所/あすか社会保険労務士法人/吉田建築計画事務所/クレハ建設/棟匠ライフ/TRUNK/家具工房 Rew craft/おおば木匠/大津晃窯/その他

セールスパートナー

JTB/一休/リクルートライフスタイル/楽天トラベル/ロコ・パートナーズ/その他

所属団体

大洗観光協会/大洗町商工会/大洗旅館組合/茨城県ホテル旅館生活衛生同業組合/茨城県調理師技術振興会/茨城県観光物産協会/水戸観光コンベンション協会/茨城女将の会

メディア&アワード

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